「30秒では伝えきれない。」
Instagramのリール動画を投稿するたび、この言葉が頭をよぎります。
10万再生を超える動画を作れても、本当に伝えたいことの10分の1も表現できていない。そんなもどかしさを抱えながら、毎日DMで寄せられる質問と向き合ってきました。
「なぜその手順なのか?」「どういう原理で味が変わるのか?」「自分の現場でも応用できるのか?」
現場の料理人が本当に知りたいのは、動画の表面的なテクニックでははないのでは?と考えました。
そこでこちらでお伝えするのは、その奥にある理論、そして何より「実践し続けられる方法」です。
目次
- 私という料理人について
- 「なんとなく」では上達しない現実
- Instagram運営で見えた限界
- DMで寄せられる質問の深さ
- 「映える」と「身につく」のジレンマ
- 料理業界の「学習方法」問題
- 職人の世界の光と影
- 理論を身につける意義
- noteを始める決断
- なぜnoteなのか
すべて表示
私という料理人について
はじめまして。「シェフラボ / 料理の解体新書」を運営している、シェフラボ
です。
現場での料理人歴は12年以上。ホテル、レストラン、個人店と様々な現場を経験し、現在は料理をもちろん軸足に複数の事業を並行して運営しています。
料理書や専門誌は数百冊読み込み、常に「なぜ?」を追求する姿勢を貫いてきました。
今の流行りでお伝えすると、MBTI診断では建築家(INTJ)。
この性格が料理への向き合い方へ反映されていると考えています。
感覚や勘だけに頼るのではなく、理論を理解し、それを現場で実践し続けることを何より大切にしています。
なぜこんなアプローチに辿り着いたのか。
それは若手時代の苦い経験があるからです。
「なんとなく」では上達しない現実
料理人になりたての頃、先輩に「焼き色が足りない」と指摘されました。「どのくらいの色ですか?」と聞くと、「見ればわかるだろう」という答え。
どうやって判断するのかを聞けば「慣れだ」。
いつ頃できるようになるのかを聞けば「人それぞれ」。
私の無知さ、未熟さが原因なのは明らかですが、上達の道筋が見えませんでした。
同じ材料、同じ手順のはずなのに、昨日はうまくいって今日は失敗する。なぜなのかわからない。先輩たちは「経験を積め」と言いますが、何をどう経験すれば良いのか、どこに注意を向けるべきなのかが分からない状態でした。
この経験が、私の「理論重視」の原点です。
料理には確実に法則があります。
熱の伝わり方、タンパク質の変性、調味料の浸透、発酵のメカニズム。これらの理論を理解し、意識しながら実践を重ねることで、料理の上達速度は格段に上がります。
「勘」や「経験」も大切ですが、それらは理論的な理解があってこそ効果的に積み重なるものだと考えています。
Instagram運営で見えた限界
2025年から本格的に始めたInstagram「@cheflabo2023」は、おかげさまで多くの料理人の方にフォローしていただいています。
10万再生を超えるリール動画も複数投稿でき、毎日のストーリーズにも多くの反応をいただいています。
しかし、運営を続ける中で痛感したのが「SNSの深度」の限界でした。
DMで寄せられる質問の深さ
印象的だったのは、ある料理人の方からいただいたDMです。
「ミスジの火入れの動画を参考にさせていただきました。同じようにやったのに、仕上がりが全然違います。どこを改善すれば良いでしょうか?」
この質問に答えるためには、低温調理の基本原理から、食材の特性、前処理の重要性、温度管理の考え方まで、動画では伝えきれない理論的な背景を説明する必要がありました。
DMで長文を送っても、結局「理論を理解して、継続的に練習してください」という抽象的なアドバイスになってしまう。
30秒の動画とキャプションでは、料理の本質的な重要な部分は伝わらない。この現実と何度も向き合いました。
「映える」と「身につく」のジレンマ
Instagramというプラットフォームの特性上、視覚的なインパクトが重要になります。しかし、本当に身につく内容は、必ずしも「映える」ものではありません。
例えば、なぜその温度で加熱するのかの理論的説明、失敗した時の原因分析と対処法、基本技術を応用するための考え方など。
これらは料理人にとっては非常に価値のある情報ですが、Instagram上では注目されにくいコンテンツです。
「エンゲージメントを上げたい」という誘惑と「本当に実力がつく情報を届けたい」という使命感。この間で揺れ動く日々が続きました。
料理業界の「学習方法」問題
料理業界には「効果的な学習方法」が確立されていない、というのが私の長年の問題意識です。
職人の世界の光と影
「技術は見て盗め」「背中を見て覚えろ」という職人気質は、確かに料理の伝統的な強みでもあります。しかし、現代の料理業界では、この方法論だけでは限界があると感じています。
なぜなら
- 人手不足で指導時間が取れない
- 料理人の働き方が多様化している
- 情報へのアクセスが民主化されている
- 技術の進歩が加速している
これらの変化に対応するためには、従来の「感覚的な伝承」に加えて「理論に基づいた体系的学習」が必要です。
理論を身につける意義
私が理論重視にこだわる理由は、効率化だけではありません。
1. 応用力が身につく 基本原理を理解すれば、未知の食材や調理法にも対応できる
2. 問題解決能力が向上する 失敗の原因を論理的に分析し、改善策を考えられる
3. 継続的な成長が可能 なぜうまくいったかを理解できるため、再現性が高まり、さらに向上させられる
4. 創造性の基盤になる 基本的な法則を理解してこそ、意図的な応用や創造が可能になる
5. 他者への指導ができる 理論を言語化できれば、後輩や同僚に効果的に教えられる
もちろん、料理は理論だけで完結するものではありません。最終的には感性や創造性が重要になります。しかし、その土台として確実な理論的理解があることで、より高次元の表現が可能になると考えています。
記事執筆を始める決断
こうした背景から、Instagramでは伝えきれない理論を体系的にまとめ、実践し続けられる形で提供する場として、執筆を決意しました。
なぜnoteなのか
- 深い理論解説が可能 原理から応用まで、必要なだけ詳細に解説できる
- 実践的な資料の提供 現場で使えるチェックリストや判断基準を提示できる
- 段階的な学習設計 基礎から応用まで、体系的な学習プログラムを構築できる
- 継続的な実践サポート 理論を身につけるための練習方法や確認ポイントを提供できる
コンテンツの方向性
「シェフラボ / 料理の解体新書」では、以下のようなコンテンツを展開していく予定です:
基礎理論の体系的解説
- 熱の伝わり方と食材の変化
- 調味料の作用メカニズム
- 発酵・熟成の基本原理
- 保存技術の理論と実践
実践的な学習ガイド
- 理論を身につけるための練習方法
- 日々の調理で確認すべきポイント
- 失敗から学ぶための分析方法
- 継続的な上達のためのルーティン
コミュニティとの連携について
私は「Chefs.labo|料理人のオンライン集会所」というオンラインコミュニティも運営しています。

Chefs.labo
【料理人の、料理人による、料理人のための学びの場】 世代を越え、同じ目線で本音と技術をシェアできる場が産まれました。 主役は参加する「一人一人の料理人」です。 シェフラボが率先して、交流に参加し、経験とノウハウを全て曝け出します。
おわりに
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
「シェフラボ / 料理の解体新書」では、Instagramでは伝えきれない理論や検証結果を、noteで体系的に共有していきます。
料理の現場には、まだまだ言語化されていない「なぜ?」が数えきれないほど眠っています。
それらを少しずつ解き明かし、誰もが学び合える知のプラットフォームをつくっていくことが、私の目標です。
第一回記事では「焼きの理論と実践的マスター法」を取り上げます。
ぜひ一緒に、「料理の見方が変わる体験」をしていただければ嬉しいです。
これからのシェフラボ解体新書をどうぞよろしくお願いします。


コメント